欧米医療施設視察団 団長
埼玉医科大学国際医療センター開設準備委員会 委員長
尾本 良三
平成16年8月1日付で埼玉医科大学・国際医療センター開設準備委員会が正式に組織された。本委員会には下部組織の作業部会(WG)として心臓病センターWG(委員長:横手祐二病院長)、包括的がんセンターWG(委員長:松谷雅生教授)、救命救急センターWG(委員長:堤晴彦教授、同代行:佐藤章教授)、小児救急センターWG(委員長:佐々木望教授、同代行:田村正徳教授)、共通部門WG(委員長:松谷雅生教授)、管理部門WG(委員長:佐藤健二室長、同代行:茂木次長)の6作業部会が設置された。それぞれ委員長、委員長代行のほか副委員長、常任委員等が選任されその総数は100名を超えた。平成16年8月5日に第一回国際医療センター開設準備委員会が開催され、そのキックオフ会議となった。一方、本学国際医療センター開設の準� �もいよいよ最終ラウンドに入り、基本設計から実施設計を仕上げる非常に重要な時期を迎えることになった。上記の各WGの事実上の活動は平成16年8月中旬から各委員長のもとで行われ、設計側との熱心な打ち合わせが活発に繰り返された。平成16年9月7日には各委員長らによる全WG活動の中間報告会が丸木理事長のもとで行われた。その中間報告によって各WGで重要かつ基本的な設計のフレームに対する理解が深まった。それ以降各WGはさらに詳細な点について設計側との打ち合わせが熱心に遂行され、その作業も実施計画の核心をつくような段階となった。このような状況の下で、丸木理事長の指示により「埼玉医科大学国際医療センター計画・欧米医療施設視察団」を組織することになった。このミッションの主な目的は、第一に最終的な 実施設計を作成するためにぜひ必要な新しい知見や理念を世界的な視野において見出し、また本学国際医療センターにおける管理・運営について管理関係スタッフが十分に理解を深め、かつ近い将来に直ちに必要となる具体的な運営・管理の世界レベルのノウハウを学ぶことなどである。
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2.視察団の組織、視察対象施設の選定及び日程等
理事長及び開設準備委員長らが協議のうえ、医師部門は尾本良三団長、丸木清之副団長を含め5名、管理部門から佐藤健二開設準備室長ほか担当スタッフ7名、設計部門から伊藤喜三郎建築研究所の浪川宏氏ほか5名を加えて総勢18名の大きな視察団が編成された。
視察対象の選定にあっては、ゼネコン側で蓄積された資料や医師部門スタッフ側の資料からヨーロッパ、アメリカを含めてまず20箇所の有名施設、あるいは特色のある施設が選ばれた。その上で、本学国際医療センター開設にとって最も有用な知見を得るという具体的な目的を念頭に、さらに厳選して最終的に7都市で8医療施設が選出された。それら8施設の選出の基準は一様ではなく、本学国際医療センター計画案とほぼ同規模のものや近く新病院開設中のものが含まれ� ��いる。また本学国際医療センターで計画されている中心的な3本の柱である「包括的がんセンター」、「心臓病センター」、「救命救急センター」を念頭に置き、世界的レベルでトップクラスの包括的がんセンターCOE(Center of Excellence)、心臓病センターCOEがその中に含まれた。また、救急医療の実際と将来像についても特別の関心を持って各施設で視察、調査を行うこととした。ドイツのバドユーンハウゼン心臓病センターは現在世界的なCOEであるが、わずか20年で世界のトップクラスまで驚異的に発展させた。本学とは交換留学生制度をはじめ医師、看護師、体外循環技術者(MEサービス部)等の長期、短期の留学によって双方向の緊密な交流を実現している。長期にわたりライナー・ケルファー教授、南和友教授には特別のご指導を頂き最も親縁関係にあり選ばれた。このようにして選ばれた8施設に関して、多数回の準備打ち合わせが行われ、あらかじめ"視察のポイント"が整理された。視察は平成16年9月20日から10月2日までの13日間という比較的短期間であ� �たが、精力的に視察が遂行されおおむね計画通りに無事終了した。
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3.欧米医療施設視察報告書
子供のストレスや不安
帰国後、直ちに視察報告書の作成準備にはいり、大量の資料を使用して団員全員が具体的に担当領域の報告書作成作業に着手した。多数回の編集打ち合わせによって、報告書フォーマットの概略を決め、視察報告書をまとめた。メッセージを簡素なものとし、図面や写真を多用して視覚的にも分かりやすさを尊重する方針とした。平成16年10月26日に国際医療センター開設準備委員会の全メンバーと関係者を対象にその報告会を行った。視察報告はA3版約70ページの「埼玉医科大学国際医療センター計画・欧米医療施設視察報告書」と、詳細な資料、設計画、施設の映像、基礎的データーなどを含むA3版で90ページのファクトブックとも云うべき「同資料編」の2部からなり委員会メンバー及び関係部署に配布済みである。これら報告書及び� ��資料編は、国際医療センター開設準備室及び総合医療センター秘書室において自由に閲覧できるように用意してある。内容のコピーも可能であるがコピーライトに注意が必要である。埼玉医科大学々内報の本号における報告では、紙面の制限から極めて簡単にしか報告できないが、必要に応じてその詳細は上記の報告書及び資料編を参照頂きたい。
本視察団一同は重大な使命感をもってこのミッションに参加した。視察団全員がこのミッションにおいてそれぞれの立場で大いなる感銘をもって多くの収穫を得ることが出来たと考えている。視察団一同はこの欧米医療施設視察団報告書が国際医療センター開設のために具体的に寄与することが出来ることを切に願うものである。
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4.視察報告概要
4-1 各視察施設の特徴
(2)バドユーンハウゼン心臓病センター
(3)マーストリヒト大学病院
(4)ノーフォーク・ノリッジ大学病院
よく知られているように英国の医療制度は1次医療が家庭医(GP)、2次が地方病院、3次が総合病院・大学病院と明確に役割分担がなされている。病院受診時は、GPが病院に診療情報提供の紹介状を送り予約する。受診後は病院からGPに結果が報告され、GPにすべての医療情報が集まる。 |
(5)ジョンズ・ホプキンス大学病院
(6)MDアンダーソンがんセンター(テキサス大学)
(7)テキサスハートセンター
(8)UCLAメディカルセンター・ウエストウッド病院
UCLAメディカルセンターでは、2005年5月に完成するベッド数520床の新病院ウエストウッド病院建設の、ちょうど最終ラウンドの時期であった。新病院は外来センターに隣接して建設しており、旧病院の大部分がこの新しい病院、ウエストウッド病院に移転する。ウエストウッド病院では520床のうち108床がICU、24床がPICU、22床がNICUで占めている。手術室は22室あるが手術室と多数のインターベンション治療室を近接させて設計しており、将来の治療方法の変化に十分に対応できるように相互に転用可能とするように計画されている。UCLAとしてはUCLAメディカルセンターを主たる教育病院とし、277床のサンタモニカ・メディカルセンターはコミュニティ・ホスピタルとして機能している。ウェストウッド病院は役割分担を明確にし、最先端医療 に専門特化した世界が最も注目している新病院である(図14)。 |
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4-2 欧米医療施設視察から示唆された将来の方向性
埼玉医科大学国際医療センター計画において最も重要と思われる将来の方向性について、以下簡単に報告する。この目的のために欧米医療施設視察によって得られた膨大な知見や資料から、横断的にごく簡単にまとめさせて頂いた。国際医療センターの役割分担を主として高度先進医療に専門特化すると考えた場合には、以下に列挙したようなキーワードが将来の方向性を検討するために重要であると思われた。
- 患者中心の医療
- 手術とインターベンション治療の重点化
- 急性期病院における病室の概念の変化:入院治療から通院治療へ
- 病院の「使命」と「展望」などの理念の共有
- 病院の戦略に合致する救急医療の選択
1.「患者中心の医療」
「患者中心の医療」はあまりにも基本的なスローガンで新味がなさ過ぎるように思われるが、視察の随所であらためて「患者中心の医療」の重要さを認識し直した。「患者中心の医療」の考え方は、具体的に病院内のあらゆるところで息づいていた。その第一歩は明るくて広い玄関(エントランス・ロビー)であって、患者がしみじみと"この病院でなら自分の病気は治りそうだ"という雰囲気をかもし出す努力がなされているように思われた。癒しの空間を作り出す努力がすべての施設で共通している点であった。エントランスは陽光が入るアットホームな雰囲気で、レセプション空間として機能させている。エントランスは各ゾーニングへの出発点であり分かりやすい大きなサインとしての空間である。多� �の施設で屈強な警備員が詰めている。外来も同様で、ホテルのロビーのようにゆっくりと座れる外来が基本であった。次の患者を診察する場合、マイクで患者名を呼ぶというようなわが国ではよく見かける騒々しさはどの施設でも全く見られない。医師あるいは看護師が患者を迎えに出てきて待機している患者に「○○さんですね」と丁寧に診察室へ招じ入れるという形式をとっている施設が大部分であった。もともとマイクは病院にはなじまないし、病院はサイレントであることが基本である。このことは患者のプライバシーという観点から必須なことであろうが、精神的に"患者が第一"という考え方がその基本であるのだと納得させられた。各病棟の入口にあるのが病棟コンシェルジュでホテルのチェックイン・レセプションかコンシ� ��ルジュと大変類似した雰囲気である。何よりも病院くさくないことが共通の特徴であった。病院によっては入院受付が玄関ロビーの一部の大変きれいで明るいレセプションカウンターで行われている。また病院によっては入院手続きをそれぞれの病棟の病棟コンシェルジュで直接行っている。ここでも中央化と分散化をうまく調和させている。手続きを簡素化にするためには、紹介医と病院医師との間の連携があらかじめうまく行われているという基盤整備が必要条件であろうと想像される。バドユーンハウゼン心臓病センターの入院レセプションは、がらんとした大きな部屋に入院患者と家族がポツンポツンといるように見えた。一日に百数十人に及ぶ入院と退院が実際には行われているが、多くの情報をあらかじめ紹介医から受け取� �、また先方に送付するということがあって初めて実現するシステムであった(図15,16,17,18)。
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さらに、病院内でショッピングモール、ホスピタルモールの風景を見ることはごく当たり前であり、"そこにもう一つの街がある"という思想である。
そこでは医療に関連するショップやセブンイレブンのようなスーパーマーケットのほかに、美容室もあるし、衣類を扱うショップ、本屋も花屋もあるという具合である。化学療法による脱毛に対するカツラや、乳房手術患者のための特別のブラジャーを扱うショップもある。また、どの施設でも設備されていたものに、患者図書館がある。前述の通りMDアンダーソンでは、それはラーニングセンターと呼ばれている。そこに用意されている情報源は、患者レベルで十分によく理解出来るやさしい解説書から医学的レベルの高い本格的な専門書まで多数備え付けてある。ビデオやDVDも自� ��に利用できる。このような情報を得るために専門の図書館員と複数名のボランティアが活躍している。患者用図書室と呼ばず、あえて「ラーニングセンター」と呼んで"患者自ら学ぶ"という姿勢を示すネーミングとしていることに大いに感銘を受けた。MDアンダーソンでは、入院患者の食事は、ちょうどホテルのルームサービスのように、1人1人がメニューを選べることに驚かされた。食事の時間も患者が決めるという徹底ぶりである。病室訪問のビジターのための食事メニューも別に用意してある。食事を担当する部署の担当者に質問したが、特に困難はないという返事であった。
2.「手術とインターベンション治療の重点化」
この事項は、医療の将来の方向性を予測する上で重要である。考え方として、将来の治療法は現在より更に非侵襲的になり、入院治療期間はより短縮されるであろうという予測がその底流にある。具体的な例としては、脳血管外科や心臓血管外科の手術はカテーテル治療へ変化するものが多くなる可能性があり、また消化器や肺外科手術などは相当部分が内視鏡手術に移行するであろうと予測している。また手術とインターベンション治療の両方を組み合わせて行うハイブリッド治療がもっと多く行われるようになるであろう。少なくとも従来の手術とインターベンション治療の区別は間違いなく変貌することが予想される。最も印象深かったのがジョンズホプキンス大学病院の新病院計画と、2005年5月に開設されるUCLAメディカルセン� ��ー・ウエストウッド病院の設計思想である。ジョンズホプキンスでは、手術とインターベンション治療に必要な心臓血管造影室などとの境界線があまり明瞭ではなくなり、手術室からイメージング検査(血管造影・超音波・CT)を使用する治療室への転換が双方向性に可能な構造にあらかじめ用意されている。ジョンズホプキンスはこのような設計をビッグボックス(Big Box)という魅力的な名称を使ってこのような設計思想を表現していた。イメージング検査室とインターベンション治療室と手術室がお互いに近接してレイアウトされ、かつ互いに転換可能という柔軟性を保っていることは、ジョンズホプキンス大学病院とUCLAウエストウッド病院とでほぼ一致していた。このような計画では、インターベンション治療の途中から標準手術にコンバードする場合にも、患者を移動せずに継続して行うことも出来る。今回の視察では、高度の先進医療に専門特化することを使命とする病院では、手術とインターベンション治療を重視という姿勢は共通して明瞭に認められた。このことは、極めて重要な将来予測に強い示唆を与えるものとなった(図19)。
3.「急性期病院における病室の概念の変化:入院治療から通院治療へ」
在院日数短縮というのは、現在の世界の医療事情における重要な方向性である。将来のわが国においても同様の傾向が進むことが予想されている。入院治療と外来通院治療を合理的に分離する場合に重要なことは「外来通院治療」を充実することである。そのために患者に不利益があってはならない。この場合もまず第一に「患者中心の医療」の精神が連続していることが大切である。視察したすべての病院で、急性期病院としての病床数配分をみると、ICU、リカバリールーム、ICUステップダウン、HCUの比率がきわめて高い。このことは医療経済の立場から病院の収益性を重視しているという見方もあり得るかもしれない。しかし、これを患者の利益を損なわずに可能にしているのは、後方支援の役割を持つ関連病院との緊密なネット� ��ークであった。急性期の主要な治療を受けた患者が通院治療に移る場合に、患者に不安を与えないシステムがあらかじめ構築されている。その極端な例は、テキサスハートセンターで見られた。全病床80床のうち51床がICU(リカバリールーム)で占められている。それを可能しているのは、隣接し廊下や地下通路で自由にセントルーカス病院と一体となっていることで、患者の移動は極めて容易である(図20)。
バドユーンハウゼン心臓病センターでは6日前後の平均在院日数であるが、多くの症例では自宅に帰る前にごく近くのリハビリセンターにまず転院している。このリハビリセンターで体力を回復させてから、安心して紹介医へ逆紹介されて自宅に帰るシステムである。ジョンズホプキンス大学病院の包括的がんセンターでは� �がんセンターの同一ビルの5階と6階にパビリオンという名称のホテル形式の施設が用意されている。手続き的には退院しても事実上は入院している状態に近いので、患者や家族は安心感を持つことが出来る。MDアンダーソンがんセンターでは、ホスピタルイン(Hospital Inn)としてマリオットホテルと空中通路で、道路を隔てて病院と交通している。医師、ナース、患者、患者の家族がこのマリオットホテルをうまく利用している。マリオットホテルでは患者用の特別のホテルレセプションがあり、宿泊料金も一泊99ドルと大幅にディスカウントされている。視察で知りえた限りでは、病院と紹介医・紹介施設とのコミュニケーションあるいはネットワークは極めて緊密に構築されている。
急性期病院のあり方としては、すでに述べたように、1人1人の患者に最も優れた治療を実施するための治療プログラムは入院前から計画されるべきものである。入院前から入院治療計画のあることは当然だが、同時にすでに退院計画が用意されている必要がある。用語としての「退院計画」は"退院"そのものを意味� �ない。通院治療を積極的に取り入れて「患者中心の医療」のために一連の治療プログラムをあらかじめ準備してあることに大いに感銘を受けた。特に包括的がんセンターCOEでは、安全に配慮した専門スタッフ(医師、看護師、支援スタッフ)の手によって十分に計画された外来通院治療が行われている。外来通院治療の受付レセプションから、その日の治療が終わって支払いキャッシャーまで実にスムーズに行われていた。ここでも病院業務によっては中央化と分散化の両方がうまく共存している。
4.病院の「使命」と「展望」などの理念共有
「患者中心の医療」の実践は、医療提供者側(医師、看護師、その他スタッフ)が便利な病院ではなく、患者側にとって便利な病院で患者の満足度が高いことが最も大切である(Customer's Satisfaction, CF)。一方、医療を提供する側のスタッフが満足する病院でなければならないことはまた当然である(Employee's Satisfaction , ES)。この場合、スタッフと病院経営側の両方で理念を共有することが極めて大切であることの具体例を今回の視察の中で強烈に印象付けられた。ジョンズホプキンス大学病院ではスタッフの採用にあたって約300問のコンピュータを使用した質問がある。一つ一つの質問は簡単ではあるけれどもその全てが「患者中心の医療」に通じており、また病院の基本理念に合致する質問集である。これに全問答えて合格しなければ、いかなるスタッフも採用されない仕組みになっている。従って職員はその「患者中心の医療」の基本理念を間違いなく共有しているという前提が成り立つ。MDアンダーソンでは病院の使命(Mission)、病院の展望(Vision)を最も目立つ重要なエリアに大きく掲げている。従って、採用された全スタッフはこの使命と展望� �どを十分承知し、同意した上で患者に奉仕し病院の発展を願うという仕組みが成り立っている。「職員一丸となって、MDアンダーソンがんセンターをもう一度全米のトップにしよう」というアピールの大きな看板を掲げていることに感心させられた。
5.病院の戦略に合致する救急医療
救急医療の戦略は、国の医療制度や各施設の特徴あるいは地域的役割等が重なり合って一様ではない。オランダ・マーストリヒト大学病院では、従来は年30,000〜35,000人の救急患者がいたが、1次2次の患者が中心であった。この問題の解決のために救急にホームドクター制を取り入れて、そのホームドクターがトリアージして最近では救急患者を20,000人にまで減少させた。色々と医療制度上の制限のある英国では、救急には誰でも直ちに来院が可能なため、ノーフォーク・ノリッジ大学病院では救急は年間67,000件となっており、なお年に10%ずつ増加している。その70%は診察してすぐ帰宅させる患者である。4人のレジデントでトリアージしているが、このままでは救急部門の維持は破綻に瀕している 。一方、ジョンズホプキンス大学病院では、600床の新病棟計画(ほとんど新病院と云って良い)に関連して「病院の戦略に合致する救急医療」というコンセプトを前面に出して、救急医療の問題と積極的に取り組んでいる。現在、ジョンズホプキンス大学病院では近郊の関連病院であるハワードカウンティ病院の新しい救急部門と戦略的に患者をシェアしている。ハワードカウンティ病院の入院患者は75%が救急部門を通して入院させている。ここは救急に患者が来やすい施設としてはじめから計画された。一方、ジョンズホプキンス大学病院では、全米の他の州や外国からの入院患者で成り立っているので、内心は救急からの緊急入院を出来れば制限したいと考えている。ジョンズホプキンス大学病院はハワードカウンティ病院と連携し� �、自分の病院の役割分担と特徴と生かしている。視察団がジョンズホプキンス大学病院で学んだことは「病院の戦略に合致する救急医療」を計画するという基本的な考え方であった。ところで、現状のジョンズホプキンス大学病院の救急部では、小児の救急は成人の救急とエントランスを分けている。小児救急は実際は小児科で対応しているが、その半分は喘息である。必要があればそのまま小児科に入院させる。救急患者の来院にはピークがあり、ジョンズホプキンス大学病院では昼間の8時間に入院が多い。医師は夜間が1名でピーク時が4名であり、あとはレジデント4〜6名であり、意外と少ない人数で運営されている。救急部では3シフトで当直室や仮眠室は全くない。
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